大田区児童部
1 目的 学童保育事業の運営に当たり、児童の指導上留意すべき事項を定めることを目的とする。 2 指導上の基本的要件 学童の全生活は家庭、学校、社会の三つで行われている。しかしながら、学童保育所は家庭でもなく、学校でもなく、また地域社会でもない特殊の集団である。したがって指導にあたっては、特に次の事項につき留意する必要がある。 (1)家庭的ふん囲気と暖かい環境の醸成 学童保育所に通う児童は、日中家庭から放置され、正常な生活の場と保護者の適切な監護や十分な愛情を得られないため、それによっておこるさまざまな欲求不満から、不健全な遊びや反社会的な行為に走りやすい。またこのような状態が継続することによって情緒不安定や孤独癖に陥り、あるいは放浪性や活動過多症(落ちつきのなさ)を呈するなど、その人格形成の上でも好ましくない影響を生ずることが。少なくない 従って、できるだけ暖かい家庭的ふん囲気をつくるよう配慮し、児童の悩みや欲求を母親のような気持ちで優しく聞いてやり、また、常にどの児童に対しても、公平な態度で接することが何よりも大切である。 (2)ひとりひとりの児童を具体的に理解 ひとりひとりの児童の性格はもとより、その家庭の状況、学校における学習態度等につき十分理解し、そこに潜む問題をとらえ、各自の能力、個性に応じて個別的、集団的に指導を行い、身心の調和のとれた発達が図れるよう援助、指導を行う必要がある。 (3)児童の健康管理と安全の保持 学童保育事業は児童の危険防止と健全育成を図るものであるから、児童の健康と安全の保持について、特に注意しなければならない。 児童は身体的に未成熟の状態にあり、自ら健康管理する能力に欠けている。 そこで、たえず児童の健康状態に十分注意をはらうとともに、下水、排水便所、汚物および塵芥処理についての管理、室内の換気、採光、保温等の環境整備に注意し、あらかじめ病気に際しての応急的医薬品の準備、嘱託医療機関の指定等適宜な措置を講じておかなければならない。 なお、ケガその他不慮の事故を防止するため、危険な玩具や遊戯の追放と、健全な遊びの指導、交通安全の指導などを十分徹底するとともに、随時災害訓練を実施し、あらゆる災害について、常時、万全の態勢をとっておく必要がある。 (4)社会適応性の助長 一般的に児童は社会の集団生活の経験が浅く、社会に適応する能力が未発達の状態にある。まして、学年、クラス、性別、性格等が異なる児童が一つの部屋で生活することは複雑な人間関係を生ずることとなる。 従って、児童相互の関係に十分注意し、話し合いの機会と集団的な遊びをなるべく多くして、常に相互の理解と信頼を深め、お互いに励まし会い、助け合っていく態度を養うよう指導する必要がある。なお、児童の中からリーダーを育て自主的な活動ができるよう指導することが望ましい。 (5)家庭や学校との連絡 日中保護者が不在のため家庭との連絡は、円滑を欠きやすい。そこで連絡簿による連絡を活用するとか、保護者会を定例に開くと化して、学童保育所における児童の状況、指導方針および保護者からの要望等につき連絡を蜜にする必要がある。 ここで問題となるのは、保護者が児童を正しく認識し理解しているかどうかです。 まったく児童に対して無感心で放任的な家庭、或いは、必要以上に者や金を与えたりして甘やかす家庭等については、保護者の指導についても考慮すべきである。 つぎに、学校との関係である。これは比較的連絡がとりやすいと思われるが、必要に応じて、学校における児童の学習態度、交友関係或いは教育方針について、十分な連携を図ることは指導上不可欠な要件であるので、各児童の学校、特に担任教師の協方を得られるよう平素十分配慮しておく必要がある。 なお、特に問題のある児童、又は問題のある家庭については、児童相談所等児童福祉関係機関の協方を求め早期に問題の解決を図る必要がある。 以上(1)から(5)までについては学習保育における指導上の基本的留意事項であるが、この種の事業は地域との密着性が強く要求される。従って指導にあたっては、前記一般的原則の上にたって、その地域の実情にそった適切な指導が必要となる。 いずれにせよ、児童の全生活領域、すなわち家庭、学校、社会が一体となって、それぞれの立場で、それぞれの機能に応じた統一的指導を行って初めて児童の健全な育成が図られる。留守家庭児童は、このうちの主要な生活領域である家庭から、多かれ少なかれ疎外された状態にあり、従って学童保育所は家庭の機能を代替するものとして、しかし家庭、学校、社会とは異なった新たな生活領域として科学的、合理的に運営されねばならない。 3 指導方針 学童保育における指導を具体的方法別に見ると、 (1)余暇指導 (2)生活指導 (3)学習指導の三つの部門に分けることができる。 しかし、これら三つの部門はそれぞれ独立したものでなく相互に密接不可分の有機的な関連をもつものでなければならない。したがって、学童保育の指導にあたっては、学童保育中の生活の全般にわたって配慮する必要がある。 (1)余暇指導 児童は学校において、精神的、肉体的にある程度拘束された状態にあるので、放課後は自由で活動的となるのが自然である。従って余暇指導は、これら児童の開放感と活動性を尊重し、適切な方法で、個別的または集団的に指導することにより情緒、協調性、想像力、体力、活動力等を尊重し、心身の調和のとれた発達を推進するよう計画、実施されなければならない。 具体的内容の例示は概ね次のとおりである。 遊具による遊び、集団遊び、音楽、舞踊、読書、絵画、製作、お話、紙芝居、人形芝居、劇、映画、遠足、運動等があり、これらの中から適当なものを選んで、個別的、集団的に行い、指導にあたっては、児童の自発的、自治的な活動を助長するよう努めなければならない。 (2)生活指導 生活指導は、児童が日常の中で、社会の一員として活動できるための人格の形成を目的として行われるものであり、児童が将来健全な社会生活を営む上に必要な基本的生活習慣を習得させるよう指導することである。 このことは、単に日華に従って行うばかりではなく、保育中の生活の全般にわたって当然に起こり得るさまざまな問題に関して臨機に適切な指導を行われなければならない。 具体的内容の零時は概ね次のとおりである。 (ア) 自分の所持品は自分で整理整頓させる。(例えば、靴、鞄、洋服、帽子、学用品等) (イ) 勉強や遊びがすんだらあとしまつをさせる。(例えば、学用品、遊具等) (ウ) 宿題は進んで行わせる。 (エ) 寒暖に応じて着衣を調節させる。 (オ) きめられた日課に従って行動させる。 (カ) きめられた約束を守らせる。(例えば、廊下を走らない。食膳の手洗いとうがいの励行。 つめはいつもみじかく切っておく。物を大切にする。友達とけんかをしない。 弱い人をいたわる。他人に迷惑をかけない。公有物は使ったらもとのところへ返す。 ストーブのまわりで遊ばない等) (キ) より道せず、きめられた道から帰宅させる。(各自の通路をきめておく) (ク) 交通規則を守らせる。 (ケ) 分担した仕事を最後まで根気よくやりとげさせる。(例えば、掃除、お手伝い、集団遊び等) (コ) すききらいをしない。(例えば、おやつ、お友達等) (サ) なんでもいえるようにさせる。(例えば、心配ごと、学校のこと、家庭のこと等) (シ) みんなで使うものを大切にさせる。(例えば、ステレオ、ピアノ、オルガン、図書、机、 椅子、遊具等) (ス) 危険なことをしない。 (セ) あいさつができるようにさせる。(例えば、名前を呼ばれたときの返事、入退所のあいさつ、 お客様に対するあいさつ等) (ソ) 図書やテレビは適当な距離で正しく見るようにさせる。 (タ) きたない遊びはしない。 (チ) よいことは進んで行うようにさせる。 (3)学習指導 通常学校で行われる学習指導は、所定の教科課程に従って各学年ごとに、どの児童、生徒にも共通に必要な知識、技能、態度、能力等を共通の教材によって画一的に教え導く機能であるといわれているが、理念としては、各学年の教科に盛りこまれた知識、技能等は、学校教育のみによって習得すべきものとされている。従って学童保育所は、児童が学校において、修得すべき教科内容を直接指導するという立場ではなく、児童の学習意欲を助長し、自主的に学習する習慣を身につけさせることを眼目として行うべきである。 学習指導の具体的内容は、国語、算数、社会、理科、音楽、図が工作等学校の教材に基づいて行うことが必要であるが、家庭における宿題の整理程度で十分である。 (4)指導計画 児童の指導は、日日、週間、月間、年間の実施計画に基づいて効果的に実施し毎日変化に富み、楽しく安全なものを体系的にとり入れて運営するよう努めなければならない。 (1) 立案にあたっての留意点 ア 地域の実情にそくしたものであること。 イ 喜んで参加できるような変化に富んだものであること。 ウ 安全確保に留意したものであること。 エ 児童の体力、能力に応じたものであること。 (2) 日課、週間、年間の各計画の様式は別に定める。 5 諸記録及び関係書類 児童が入会して脱会するまでの諸記録を、系統的に整備することは、児童の現在及び将来に起こり得る諸問題について的確な資料を与えるものである。従って、記録ならびに関係書類への記入は、客観的立場から慎重かつ正確に行わなければならない。なお、児童の入会に伴う記録及び関係書類は(1)児童台帳(2)育成日誌(3)育成記録である。 |